うつ状態のとき、本人は自分がうつ病かも知れない状態にあるとは考えていないことが多いようです。いつもと同じように目の前の問題と向き合っています。
ではうつ状態のとき本人はどう考えているのでしょう?周りからはどう見えるのでしょう?こころの中は出血や発熱のように外からは見えません。
実際には本人が具体的に何も考えていなくても、声が小さくなったり、話し方がゆっくりになったり、ため息が出たりするわけです。
集中力が衰え、会話の内容が理解できなかったり、会議で考えをまとめて発言できなくなったりしてくるので非常に焦燥感も募っています。
そして、その焦りや不安からますます考えが偏り、さらに焦燥感や不安感、孤独感といったものが強くなるようです。
これは「脳の神経伝達がスムーズに行われなくなるため、いわゆる”頭の回転”が悪く(※1)」なります。けっして本人が悪いわけではありません。
健康なときなら何でもなかったことも、追い詰められる不安や焦燥感からくるつらさ、体の疲労感・倦怠感など、言葉にならないほど大きな苦痛となります。
症状が回復すると、なぜそんな思いがこころに浮かんだかは不明なことも多いのです。
以下言葉では形容しがたいものですが、強引に一例を挙げてみました。
本人の気持ち | 家族・周りから見て | |
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しなければいけないことが増えてきた。いやこんなこと以前ならできたはずだ。一体何からすればいいのか?頭が回らない。こんなことも出来なくなってしまった。情けない。なんて根性なしなんだ。迷惑をかけっぱなしで申し訳ない。 | ⇔ | ため息ばかりする。会話をしていても笑顔がない。段取りがわるくなったようだ(優先順位を決められていない)。声量がなく無口になったり、逆にイライラして怒鳴ったり。 |
頭が重い。体がだるい。人に頼む?休む?冗談じゃない。これは自分がやらなくて誰がする。しっかりしなければ。 | ⇔ | ため息ばかりする。休むよう勧めたり、代わりを提案しても、頑として譲らない。 |
人の話が頭に入らない。先ほどのあの人の発言はなんだったかな。いつもどおり読んでいるのに内容が把握できない。あれっ、何の話をしていたんだ?頭が真っ白だ。その前何を考えていたんだっけ? | ⇔ | 「少し疲れている」(親しい間柄なら「頭が悪くなった」など)と訴える。返答するのに時間がかかる。簡単な作業もできなくなる(集中力がなくなる)。以前より本や新聞を読むのに時間がかかっているようだ。 |
気分転換にと誘われたがまったくしたくない。あれほど楽しみにしていたスポーツ番組。最近テレビのスイッチを入れる気もしない。どこへも行きたくない。何も見たくない。何も聞きたくない。誰にも会いたくない。とにかくじっとしていたい。 | ⇔ | 以前から楽しんでいたことを気分転換にと誘ったが乗ってこない。日課にしていることなどをしなくなる。何をするのも嫌がる。声量がない。無口になる。ため息ばかりする。すぐ横になりたがる。動作が鈍い。以前より会話が減った。 |
体がだるく、重たく感じる。まるで鉛のスーツを着ているようだ。力が入らないので何をするにもおっくう。口を動かすのもおっくう、字を書くのもおっくう。箸が重く、持ち上げるのさえもおっくうだ。とにかく横になりたい。 | ⇔ | 動作が緩慢になる。表情の変化が乏しくなる。声量がない。無口になる。ため息ばかりする。すぐ横になりたがる。コピー1枚とるだけ、ポストへ行っただけなのにひどく疲れてつらそうである。日課にしていることなどをしなくなる。 |
パンはスポンジのようだし、ご飯は糊のよう。味がしなくなった。箸やお椀を持ち上げるのがつらい。もしこのまま何も食べずに寝込んでしまっては申し訳ない。でも胸がいっぱいで喉を通らない。 | ⇔ | 痩せてくる。食欲がない。食事の時間が苦痛のようだ。好きなものも食べない。箸が震える。箸を使う料理よりナイフやフォーク、スプーン料理を選ぶ。(疲れたときに甘いものが欲しくなるように、脳が”疲労”だと勘違いし、甘いものなどを大量に食べる場合もあるそうです。→太ってくる) |
頭が割れそうに痛い。まるで孫悟空の金箍の輪が締まっているようだ。病院で診てもらったら異常はなかったのだが。 | ⇔ | 「偏頭痛」がひどいのかな?かなり疲れている様だ。毎日おでこに冷却シートを使っている。鎮痛剤も多用しているようだ。イライラしている。 |
最近目覚めるのが早い。かといって眠っても眠っても寝たりない。眠っても疲れが取れない。もしや睡眠時無呼吸症候群? | ⇔ | 最近午前中はぼうっとしてため息ばかりするが、午後には多少回復しているようだ。眠れていないのか、疲れがたまっているのか。声量がない。午前中の外出や用事を嫌がる。 |
とにかくイライラする。出口の見えない問題が山積み。不安と焦燥感が募る。自分がなんとかすべきなのにできないのが情けない。 | ⇔ | 落ち着きがない。攻撃的になる。無意味な行動をする。アルコールの量やタバコの本数などが増える。早口でしゃべる。元気が有り余っているように見える。 |
最近物音がひどくうるさく感じられる。絶えられないほど。新聞配達の音でも目が覚めてしまう。テレビ、人の声、音楽、電話の着信音、洗濯機、電気、ドア、足音・・・、自分の声さえも。 | ⇔ | 声量がない。ひとつ返事だけだ。無口になる。何をするのも嫌がる。ドアの開閉音や足音など日常の非常に小さな音にも敏感になる。 閉じこもりがち。音に敏感で、ドアの開け閉め、足音さえも嫌がる。 |
迷惑をかけてばかりだ。本当に申し訳ない。役に立たないならこの世にいないほうがいいのかもしれない。空気と同化したい・・・。シーツに溶けていきたい・・・。 | ⇔ | 無表情になる。声量がない。無口になる。ため息ばかりする。引き出しに同じ種類の薬を溜め込んで、処方どおりに飲んでいない様子。部屋を片付け始める。 |
※上記は一例であり、人により状況は様々です。「家族・周りから見て」が必ずしも「本人の気持ち」に帰結するものではありません。 |