精神疾患のケアを行うための訓練を受けた専門家は精神科医だけではありません。精神医療の専門職はほかにもあります。
臨床心理士・医療心理士については国家資格化する動きがありますが、現在、医療学会や医療団体が各々認定しています。
医師がそれらの資格を持っている場合もあります。(各学会・団体のウェブサイトには、認定医や有資格者の連絡先が掲載されていることがあります。→
相談窓口リンク集「学会・協会」)
精神医療の専門家たちは、心理療法を用いながら心の問題に対して援助したり、医師の直接的指示下で医療における臨床心理活動を行ったりしています。
患者にとってこの方たちの存在は非常に大きいように思います。
解決できない心の問題を持っている人に対しては、対話を通じ本人自身の自己理解を深め、
建設的な行動が取れるよう成長を図ったり、さまざまな心理療法や心理アプローチで患者の心に耳を傾ける専門職があります。
※診断・診察・薬の処方ができるのは医師だけです。
医学部卒業後、医師国家資格者に合格した者
診断・診察・薬の処方ができる。
一般社団法人 日本心身医学会認定医療心理士。
医療心理士の認定を受けられる者は、大学で心理学及びその周辺領域を専攻して卒業した者か、同等の医療心理の実務経験を有する者とし、 また、一般社団法人 日本心身医学会で認定された研修診療施設で一定期間心身医学を研修し、所定の手続きを経て、 さらに学会が定める試験に合格し、コ・メディカルスタッフ認定制度委員会の審査を経て理事会で承認された者。
認定医療心理士の活動は、医師の包括的かつ直接的な指示下で医療における臨床心理活動を行う。心身医学専門医師の下が多いと思われる。 心身医学とは、こころとからだを一緒に診る学問。最近の研究から、精神や脳とからだの相関メカニズムがわかってきており、心身医学を実践する診療科が心療内科である。 2007年7月31日現在全国で84名である。(一般社団法人 日本心身医学会/ 2013年4月1日より「社団法人 日本心身医学会」から「一般社団法人 日本心身医学会」に移行)
「日本精神分析学会」認定の精神科医・心療内科医。
精神分析的な治療とは、ジークムント・フロイトの創始した精神分析を指す。 さらには精神分析的精神療法、精神分析的集団精神療法、精神分析に基づいた家族療法・ガイダンス・コンサルテーション、 精神分析的入院治療、乳幼児観察、精神分析的アセスメント、コンサルテーション・リエゾン精神医学の実践などが含まれる。
診断・診察・薬の処方ができる。(日本精神分析学会)
「日本精神分析学会」認定の心理療法士。
認定精神療法医とともに、質の高い精神分析的精神療法や精神分析の知恵に基づいた専門的サービスを提供し、 社会に向けて精神分析についての正しい知識や情報を伝達している。
公益社団法人 日本心理学会が認定する心理士。
心理学の専門として仕事をするために必要な、基礎学力と技能を修得していることを証明するための資格である。 大学での単位が学会での領域をカバーしていなければならない。
(公益社団法人 日本心理士学会)
1997年に誕生した精神保健福祉領域のソーシャルワーカーの国家資格。
もともと精神科ソーシャルワーカー(PSW:Psychiatric Social Worker)という名称で1950年代より精神科医療機関を中心に医療チームの一員として導入された専門職であり、 社会福祉学を学問的基盤として、精神障害者の抱える生活問題や社会問題の解決のための援助や、社会参加に向けての支援活動を通して、 その人らしいライフスタイルの獲得を目標としている。医療職ではないので、医師の指示によって業務を行うものではないが、 「主治医がいれば、その指導を受けること」もPSWの義務として定められおり、主治医の意見を聞き、指導を受けるものの、 PSWとして独自の専門的な視点に基づく判断と、それによる支援を行う職種である。
配属先により業務内容は変わるものの、精神障害者の生活を支援する立場であり、医療と地域生活の橋渡しをすること、 常に権利擁護の視点を持つこと、医療機関にあっても治療を担うのではないことは共通している。
常時勤務の例は少ないが、教育現場のメンタルヘルスに関する相談援助を行うスクールソーシャルワーカーや、職場でのストレスやうつ病対策、 職場復帰のための支援などを行う企業内ソーシャルワーカーが活躍を始めている。
(登録者数:102,069人(2022年現在)/公益社団法人日本精神保健福祉協会)
厚生労働省によって認められた公的資格で、勤労者の心の悩みに対して援助を行う専門家。 「一般社団法人 日本産業カウンセラー協会」が認定する。
1991年より資格認定を行っている。実務経験やレベルによって、初級、中級、上級の3段階に分かれている。 たとえば初級試験資格は、心理学または隣接諸学科を専攻し四年制大学を卒業したもの、あるいは経験4年以上か、 初級養成講座を終了した者。上級試験資格は、心理学または隣接諸学科を専攻し、博士の学位を有する者、初級試験合格後13年以上、 中級試験合格後4年以上の者である。(13年から受験資格変更)
産業カウンセラーは、雇用者側からのストレッサーを軽減するとともに、心理学的手法を用い従業員のストレスに関するコントロールの助言、 従業員の上質な職業生活を援助するためのキャリア開発の援助、職場における人間関係の相談・助言を行う。
※全国各地の支部において相談窓口を設置している。(1回50分6000円)
※働く人の悩みホットライン(相談無料):相談は月曜日から土曜日までの午後3時から午後8時(詳細)
「日本カウンセリング学会」認定カウンセラー。
日本カウンセリング学会とは、 1967年に設立されたカウンセリングの全領域にわたる国内唯一の学会。入会資格は、四年生大卒者でカウンセリングの研究、 学習、実践を行っている者、あるいはそれに準じる者。資格取得には、学会に入会後、2年以上活動した上で、 研究発表や研修会への参加など5つの条件を満たし面接を受けた者、学会入会後2年以上経過し、研修基準内容を学習し筆記試験を受けた者、 学会に2年以上在籍し大学などで10年以上指導したり、実際の現場で実践活動を行い、あるいは研究実績が顕著場合で理事会の推薦審査に通った者である。
自分で解決できない心の問題を持っている人に対して、援助、助言をし、問題を解決して、本人の成長を図ることを主な目的とする。 活躍領域は教育、医療、産業、福祉、司法など多方面にわたる。
広くカウンセリングの研究・教育・実践に意欲的・積極的な方の入会も歓迎している。
中央労働災害防止協会が主催する心理相談専門研修(心理相談員養成研修)を修了した者。
4年制大卒者で心理系(認定心理士取得可能レベル)、社会福祉系、保健系の正規の学科を修めて卒業した者、 保健師資格、看護師・助産婦資格(1年以上の面接・相談経験要)、精神保健福祉士、臨床心理士、認定心理士、産業カウンセラー、 社会福祉士などの資格を持つ者などが、3日間の心理相談専門研修を受ける。
職場のメンタルヘルス対策に必要な知識を持ち、働く人のストレスに対する気づきの援助やリラクセーションの指導を中心としたメンタルヘルス教育を行う。
中央労働災害防止協会サイトでは、 「疲労度蓄積チェックリスト(労働者用・家族用)」や「職業性ストレス簡易評価ページ」で簡易自己チェックを行うことが出来る。
EMDRの手法を学びその療法を行うことができる者。
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)とは、眼球運動による脱感作と再処理法のことを指す。 トラウマ(trauma/PTSD(心的外傷後ストレス))の治療に効果的な実証がなされている統合心理アプローチで、 1989年にアメリカでFrancine Shapiroという臨床心理学者が発表した心理療法。
(日本EMDR学会)
※参考文献・参考資料:厚生労働省公表資料、社団法人日本心身医学会ホームページ、日本精神分析学会ホームページ、 日本精神分析協会ホームページ、他各資格機関ホームページ、 ※1「専門職としての臨床心理士」(ジョン・マツィリア/ジョン・ホール編、2003、財団法人東京大学出版会)、 「心理カウンセラーの仕事がわかる本」(法学書院編集部、2004、㈱法学書院)、「臨床心理学がよ~くわかる本」(岩波明著、2006、㈱秀和システム)
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