うつ病になるきっかけ
うつ状態に陥りやすい人は頑張り屋さん。真正面から一度に多くのことを背負ってしまいがち。自分だけでなんとかしよう、
しっかりできる自分であろうと知らず知らずのうちに頑張りすぎたかもしれません。
うつ病になりやすい性格
うつ病の発症には性格も関係していると考えられています。タイプとしては以下のような人が挙げられます。
- まじめで几帳面、完璧主義
- 凝り性、こだわりが強い、柔軟性にかける
- 責任感が強い
- 物を頼まれるとイヤとは言えない
- 他人の評価を気にしすぎる
- 優先順位をつけず、すべていっぺんにやろうとする
- 人は人、自分は自分との割りきりが弱い
- 「~でなければならない」「~べき」を多用する
- 「白か黒か」「100点か0点か」と二者択一的で、ほどほどを許さない
- 自己否定的、悲観的
- 感情表現が下手
生活上の大きな変化から
生活や環境の大きな変化というストレスが、うつ病の引き金となってしまいます。死別や離別などの悲しい出来事だけではなく、
周囲から見ると喜ばしい出来事が引き金になるケースもあります。
- 職場環境、仕事内容の変化
- 失業や退職、出向、転勤
- 職場での激務、過労、ミス
- 定年
- 栄転、昇進
- 近親者との死別
- 別居、離婚、家庭内トラブル
- 結婚、出産
- 子供の進学、合格、就職、結婚、独立
- 家の新築、引越し
からだの病気などが原因になることも・・・
からだの病気があることや、薬の副作用により、二次的にうつ病を引き起こすことがあります。うつ病になりやすい病気などには以下のようなものがあります。
- 脳の病気・・・
- 脳梗塞、脳血管障害、認知症、パーキンソン病など
- その他の病気・・・
- 心筋梗塞、糖尿病、甲状腺機能の亢進症または低下症、更年期障害、慢性関節リウマチ・全身性エリテマトーデスなどの膠原病、
インフルエンザ・肝炎などのウイルス感染症など
- 薬の影響によるうつ病・・・
- インターフェロン(C型肝炎の治療に用いる)やステロイド剤など
こころの傷から
こころの傷「トラウマ」(trauma:心的外傷)が生活上の変化や身体の病気など何らかをきっかけにうつを引き起こすことがあります。
事件や事故、災害や戦争などの体験によるPTSD(post-traumatic stress disorder:心的外傷後ストレス障害)のうつは日本でもよく知られています。
人の脳は、死の恐怖にさらされたり、持続的な強い恐怖や無力感、虐待*1といった強いストレスを受けると大きく傷つきます。
感情が萎縮したり、希望や現実に関心がなくなったり、
怒りや憎しみの感情抑制力が落ちるなどし、また、悪夢をみたり、そのトラウマに関係する人物や場所を避けようとしたり、睡眠障害、過度の不安、怒りや混乱、
集中困難が現れるなど、感情や行動に大きな影響を与えます。
強すぎるストレスや虐待のような持続的ストレスは、好き嫌いを判断する脳の扁桃体を刺激し続け、とくに記憶に関係する海馬や、
行動や感情を抑制する右下前頭回などが大きな影響を受けたり、
脳の神経細胞の萎縮を引き起こすこともわかってきました。
人間の発達過程でこういった強いストレスを受けると、脳内で多重処理を行うのに必要な脳の短期記憶の容量が小さくなることや、
大失敗などの突発的な大きなストレスでも一時的に脳内の多重処理が困難になること、ほかに、たとえば一見簡単にこなしているような会話という作業も実は
「相手の言ったことを聞きながら」「相手の言ったことを解釈しながら」「相手の表情を読み取りながら」「自分の意見を考えながら」
「自分と相手の相違を考えながら」「自分の表情にも思いを乗せながら」「自分の思いを相手に伝える」という、
複雑な脳内多重処理を行っているわけで、こうした人との会話なども面倒になることなどが知られています。
また、人間の成長の初期段階(特に乳幼児期)における子どもにとっての不安定な生育環境(求めているときに養育者がいないあるいは要求に応えてもらえない、
主となる養育者が複数あるいは養育者の頻繁な交代など)でも、こころの成長の安定性が見出しにくくなるということがわかってきています*。
*1虐待(参考*2*3*4):
一般的に立場(力・権力・地位・関係性など)の強い人が弱い人に対して継続的に行う以下ような行為。
殴る、たたく、蹴る、つねるといった身体的暴力、言葉による暴力や恫喝、悪口や存在否定、無視や過干渉、暴力を見る・暴言を聞くといった心理的暴力、
金銭を使わせないなどの経済的虐待、
性的虐待、放任や放棄、必要な資源を供給しないといったネグレクト(児童の場合は養育放棄)
*(参考*5):要因が唯一無二の直接原因としてかならずある特定の結果に結びつく、
あるいは要因がなければ原因が生まれず決してある特定の結果には結びつかないということを意味するものではないという考慮が必要です。
※成長過程に受けた強いストレスによるこころの傷によるうつは、その当時迅速に適切な手当てを受けず放置されたままになっている場合です。
この場合、非常につらいことですが本人が思い出している場合もあれば、無意識に当時の事象を排除(あるいは海馬が萎縮)していて覚えていないこともあります。
※うつ病と一口に言っても、発症要因はひとによってさまざまです。
持病、別のからだの病気、ホルモンバランス、
服用中の医薬品から二次的に発症する場合もあります。また、性格や悩み事などによる気分の落ち込みまでもうつ病と診断してしまうケースや、
医薬品の過剰投与(多剤等)による副作用の重増で、根本的疾患や治療法を見逃してしまうケースもあるようです。
うつ病とよく似た身体症状があらわれる疾患も多いので、
気になる方は信頼のおける方とご一緒に複数の医療機関で相談されることをお勧めします。
また、薬などの対処療法だけでなくほかの療法もお知りになりたい場合は、こちらの
>>>「学会・協会」をご覧ください。