儒教経典の学
第7章 儒教経典の学(経学)
儒教の経典を研究する学問である経学が盛んになった。経学には色々な派別があり、地域では魯学と斉学の別があり、経典の書かれた文字では今文学(きんぶんがく)と古文学(こぶんがく)の別がある。
一 魯学と斉学
魯学は荀子の学統を引く魯の申培(しんばい)から伝わったもので、師伝を墨守して敢えて異説を立てず、疑わしいところは伝えないという極めて着実な学風であった。
斉は戦国時代末のすうえんの出身地で、陰陽五行説の盛行した地、斉学は天と人との相関関係を信じ、陰陽五行説や災異思想を以て経書を解釈するのが特徴で、董仲舒の公羊春秋学、孟喜・京房の易学はその代表的なものである。
二 今文学と古文学
今文は漢代通用の隷書(れいしょ)文字をいい、焚書により漢代に記憶暗誦したものを当時の文字で記したものを研究した経学が今文学である。稍々後になって山崖屋壁から古時の原本が次第に発見された。周代の蝌蚪(かと)文字で書かれていたので古文と謂い、これを研究した経学が古文学である。
今文学は陰陽五行説や災異思想を以て経典を解釈したのに対して、古文学は解釈に陰陽五行説や讖緯(しんい)の思想を用いずに、迷信思想を一掃した。許慎(きょしん)は「説文解字」を著し、文字の構造及び意義を明らかにし、鄭玄(じょうげん)は折衷して多くの経典の注釈を著した。