易学の集大成を始める


2017年10月25日
 山水蒙上九の「蒙を撃(う)つ。寇(あだ)を為すに利ろしからず。寇を禦(ふせ)ぐに利ろし」を蒙(陽の生徒)と見るか、蒙をひらく者(師)と見るか二通りあるが、陽を師と見た方が論理の一貫性があると考えます。

2017年10月23日
 天雷无妄六二の「穫(かる)るに耕(たがや)さず。こなたつくるにあらきばりせず」の解釈に@利益を期待できない、A思いもよらぬ利益を得られると二つの見方がある。
 繋辞下伝第十一章には「易の興(おこ)るや、それ殷(いん)の末世、周の盛徳に当るか。文王と紂(ちゅう)の事に当るか。この故にその辞危うし」とある。そんな易経が棚ぼたな考えをとるだろうか。私は、@の考えをとるべきだと考えます。

2017年10月21日
 天火同人六二の「宗(そう)に于(おい)てす。吝(りん)」の宗を、九五(正応)と見るか、離体の九三・初九と見るか。程伝・本義は九五と見るが、九五は剛健中正で六二は柔順中正の中正同士が応じているのに吝とみなすことは理解できない。離体の九三・初九と見る方が適当と考えます。

2017年10月20日
 小林三剛氏の現代易占術(全三巻、謙光社、加藤大岳先生監修)は易学大講座を現代版に直しただけかと思ったら、考えの違う所もあることを知ってホットしてます。見つけたのは、天地否九五の苞桑の解釈で、加藤先生は桑の細い枝で、小林氏は桑の根。私は桑の根が良いと思いますが。

 この本は初心者が本格的に勉強する時に良いと思います(易学大講座は初心者は当初は読むべきではありません。加藤先生が若い時の本なので、使える部分と使ってはならない部分が混交しているので読む時は注意しながら読まなくてはなりませんが、初心者にはそれは不可能です。充分に実力が付いてから読むことをお勧めします)。

2017年10月19日
左右と陰陽について
 筮時に左手を天策とし、右手を地策とするをベースに考えれば、
  左→天→上(天は上にある)→陽(天は陽)→外卦(上卦)となり、
  右→地→下(天は下にある)→陰(地は陰)→内卦(下卦)となる。
 
 それでは易学大講座第六巻のP28〜29の左右の別をどう考えるかが問題となります。

 易では陽を右とし陰を左としていますので、地水師の六四に「左次す」とあったのも、それが陰を以て陰位に居るからで、地火明夷の六二で「左股」といい、同じく六四で「左腹」といっているのも陰位の陰爻だからです。これに対して雷火豊の九三は陽位の陽爻なので「右肱」といって居ります(易学大講座より)。

 とありますが、左次の左は退く意、左股の左は下位で軽い方の意、左腹の左は補佐の意、右肱の右は大事な方の意で、左右と陰陽を結び付けているものではないと考えます。

2017年10月18日
 地水師上六の「国を開き、家を承(う)く」は、国家という語の出典だそうです(周易、鈴木由次郎、アテネ新書より)。

2017年10月17日
 卦変説(朱子が用いている)は、彖伝を説明するが為に六十四卦を繋縛するものにして、いわゆる角を矯めて牛を殺すの類である(周易原論より)。

2017年10月16日
 六爻は下より上に昇るを原則とする〜鄭註に云う、易は本来形はない。微より著れるに及ぶ。ゆえに気は下に従いて生ず。下爻を以て始めを為すなりと(周易原論より)。

2017年10月15日
 綜卦で裏卦の関係にある卦〜綜卦は上下を逆さまにした卦で、裏卦は裏返しにした卦のこと。両方を持つ卦としては地天泰と天地否、水火既済と火水未済とあるが、これ以外にも風山漸と雷沢帰妹、沢雷随と山風蠱があるのは(周易原論より)、今まで気が付かなかった。
 *周易原論は大正九年に印刷されたもので伯爵渡邊千春の著となるもので、たまたま神保町の古書店で昨日購入しました。

2017年10月14日
 地天泰は、三陰三陽卦のトップバッターで11卦目、乾為天から天沢履の10卦の画数は陰陽ともに30画、こんなところからも地天泰と天地否を易経では特別に見ているのではないだろうか。

2017年10月13日
 婚姻に関して天地否を得た場合、越爻生卦で見ればお互い知らないのでそれが常態で、見合いして良ければ沢山咸(以後「乾」の卦を下に運移する)となり、うまく進めば雷風恒(夫婦)となり、それが円満な生活なら地天泰(安泰)となる(易学大講座より)。おもしろい見方である。

2017年10月12日
 風天小畜上九、載を「のす」と読むか、「みつ」と読むか。字から言えば「のす」のだろうが、意味的には「みつ(満)」の方が優っている。
 本田先生(易)は、「詩経」に「その声路(みち)に載(み)つ」とある(大雅、生民)と。

2017年10月11日
 風天小畜初九の爻辞は「復(かえ)るに道による」である。一般的には初爻は進む気はあるが、進んでも応爻の六四に畜(とど)められるのでもとに復ると解釈するが、本田先生は本来あるべき場所(天)に帰る、六四は応じているから畜めないと解釈している(私には理解できないが)。人によって解釈が正反対になる。こんな所が易の難しさである。
 今井先生の補説(易経)では、王弼が升ると解し、程伝・本義もこれに従い「上進」の意としているそうです。

2017年10月10日
 水地比六二の爻辞は「これに比するに内(うち)よりす」である。本来五爻(九五)が剛健中正で、二爻(六二)が柔順中正なら、正しく応じているので五爻が二爻に来るのを待つのが通常なのだが、水地比は一陽五陰卦で九五に親しむ卦、ライバルは六四で陰位の陰爻で位は正しく比している(近くにいる)ので、六四の方が九五に親しみ易いのである。待てば六四に取られるので自分から積極的に行きなさいと言っているのである。なんと易は深いことか。

2017年10月9日
 地水師九二の「吉无咎」は、区切り方は別として、吉と咎なしがどう続くのか理解できない。朱子がよく使う未詳である。

地水師六四の「左」は、他の人は退くとしているのに、本田先生のみが左を退とするのは無理であろう。とあり、どちらが正しいのか。

2017年10月8日
 一爻のみ正しい卦〜下から、火沢けい(初爻)、火地晋、火風鼎、山水蒙、天水訟(五爻)、雷水解(上爻)だが、その特徴を用いているのは天水訟のみである。

 一爻のみ不正な卦〜下から、水山蹇(初爻)、水天需、水雷屯、沢火革、地火明夷(五爻)、風火家人(上爻)だが、その特徴を用いているのは地火明夷のみである。地火明夷は五爻が正しい位になかったので明が夷(やぶ)れると見ている。

2017年10月7日
 かえる(天水訟の九二・九四)〜九二は帰る、九四は復る、不克訟は同じでも、九二は逃れて帰る、九四は命に復るで微妙に違う、このな所も易経の特徴といえる。

2017年10月6日
 不変卦の判断(中筮法)〜どこから来て、どこへ行くかを来往生卦法を用いて見る場合がある(易学大講座)。これには、来徴生卦・越爻生卦・序卦断法などがある。

2017年10月5日
 坎の主爻と酒食〜水天需の九五は酒食に需(まつ)、沢水困の九二は酒食に困しむ、水風井の九五は寒泉食らわるとあり、胡一桂は「酒食は坎の象」としている。
 位に当らず(水天需上六)は陰位の陰爻で定位だが、内卦の三賢人を応接する位に当っていないという。この爻だけの言い方。

2017年10月4日
 水天需、九三の象伝にある敬慎を「けいしん」と読むか、「うやまいつつしむ」と読むか。けいしんと読むべき。
 敬は警と同じ意味で、外卦の坎水に進み行くを警戒し慎むことである。うやまいつつしむと読むと誰にうやまいつつしむのか、意味が不明となる。

2017年10月3日
 利渉大川は、卦辞としては水天需、天火同人、山風蠱、山天大畜、風雷益、風水渙、風沢中孚にあり、爻辞としては山雷頤の上九、火水未済の六三にあります。

2017年10月2日
 山水蒙の上爻の陽爻を、蒙(陽の生徒)と見るか、蒙をひらく者(先生)と見るか二通りあるが、陽を先生と見た方が論理の一貫性がある。
1.本田(易)は、蒙昧を退治する態度が剛に過ぎると見る(先生)。
2.加藤(易学大講座)は、自己省察せずに賢いと思い上がった蒙で、生徒と見る。
3.小林(現代易占術)は、自分を賢いとする高慢、蒙昧な態度と見る(生徒)。
4.高田・後藤(岩波文庫)は、頑冥にして思い上った者の象(生徒)。
5.公田(易経講話)は、蒙昧なる者を教導する先覚者の一人(先生)。
6.今井(易経)は、九二と共に群蒙を啓蒙する立場にある(先生)。

2017年10月1日
 卦の名義を釈するに、卦象によって説くは上卦を先にして下卦に及び、卦徳によって説くは内卦を先にして外卦に及ぶのが、その通例である(今井宇三郎、易経)。

2017年9月30日
 卦の始終で、初爻を事の始めとし、上爻を終りと見る。上爻は卦の意味が弱くなり終ると、意味が極まるとの見方があり、屯は極まると見る。
 病気で、病勢に対して回復しつつある時に占しての復は、再発と見るべき。その人の体そのものを占えば回復と見る。

2017年9月29日
 悔と吝、朱子語類では「悔とは凶よりして吉に之き、吝とは吉よりして凶におもむく」とある。
 水雷屯の六四「婚媾を求む」で、求められて往けば吉と解釈するが、それは伏卦が沢雷随となり、随うことに吉と見ている。

2017年9月28日
 何年係るか分からないが易学の集大成を始めます。その中で気が付いた点を日記形式に。
 基本資料は、
1.朝日選書の易(本田濟)
2.新釈漢文大系の易経(今井宇三郎、明治書院)
3.易学大講座(加藤大岳、紀元書房)
4.絵で学ぶ易占(宇澤周峰、虹有社)
5.現代易占術(小林三剛、謙光社)
6.岩波文庫の易経(高田真治・後藤基巳訳)
7.易経講話(公田連太郎、明徳出版社)
 を使用します。
 屯から始めます。乾坤はボリュームが大きいので最後にします。
 屯の内卦は震、震はかん葦(かんい、説卦伝)、根の張った青草の類と見る(易学大講座より)。
 向待法〜外卦を相手方とし、内卦を自分として、両卦を以て彼我の向待を察する占法(易学大講座)
 運移生卦は、陽爻又は陰爻が陰爻又は陽爻を越えて一爻ずつ上又は下すること。上に越爻させるのが主。陽爻が陽爻を、陰爻が陰爻を越えることは不可、真勢易の秘伝。(易学大講座)