无不利
无不利(利ろしからざるなし)の一考察
不利无しは、位が不正な爻は、不正だが不利はない。それなら位が正しい爻は、なぜわざわざ二重否定しているのだろうか。
不利无し(利ろしからざるなし)は、13か所ある。・火天大有上九 ・地山謙六五 ・地沢臨九二 ・山地剥六五 ・沢風大過九二 ・天山遯上九 ・火地晋六五 ・火風鼎上九 の位は不正である。
残りの・坤為地六二・水雷屯六四・地山謙六四・雷水解上六・巽為風九五は位が正しくて无不利なので一考察してみる。
・坤為地六二。坤は上経にあり2番目の卦である。六二は成卦主で坤の主爻でもある。中だが不応で比もない。
・水雷屯六四。屯は上経にあり3番目の卦である。六四は坎のなかにあり、不中だが応も比もある。四難卦の一つ。
・地山謙六四。謙は上経にあり15番目の卦である。六四は坤のなかにあり、不中・不応だが比はある。
・雷水解上六。解は下経にあり40番目の卦である。上六は震のなかにあり、不中・不応で比もない。
・巽為風九五。巽は下経にあり57番目の卦である。九五は巽のなかにあり、中だが不応で比はある。
以上五つ、位は正しいが、中・応・比・陰陽・爻位をみると同一のものがない。
私が考えるには、
・坤為地六二は、直方大とあり、爻辞としては最も良いし、象伝でも地道光(おお)いとあるので、この爻に関しては、二重否定は意(利ろし)を強調するもの。
・水雷屯六四は、四難卦で卦は悪いが、成卦の主爻である初九に応じているので、利ろしからざるなし。
・地山謙六四は、无不利が文頭にあり、謙譲の卦にあって陰位の陰爻でへりくだる時にそれができるので、二重否定で意を強くしている。
・雷水解上六は、繋辞下伝に「待時而動。何不利之有(時を待って動く、何の不利かこれあらん)」とあり、正位だが、陰位の陰爻で力が弱いが、時を待って動くので不利はなく、利ろしからざるなし。
・巽為風九五は、卦は悪い(迷い、安定性に欠けるので卦としては良くない)が、五爻は剛健中正なので、利ろしからざるなし。
本当に易は難しい。